2019年4月3日水曜日

最適は矛盾をはらむその1)演技テクの歴史では、最適という考え方はこうして生まれた

今日は私の専門、
演技の話をしましょうか

まずは、少し私に譲って、
「最適」という言葉が演技テク上に
生まれた歴史を知ってくださいな

何故?

演技とは何か?を掘り下げるのが
必要だと感じはじめるのか?

その答えはシンプルです

例えば舞台をやっていて、

何で昨日は上手くいったのに、
今日は上手くいかないんだろう
っていう失敗を避けようとするからです

質のレベルを、
80%以上にキープしなきゃ
アクターなんて名乗れない
(食っていけない、プロじゃない
  続けていけるか不安でしょうがない
 その向こうの想いはバラバラでOK
  *想い:専門用語SUBTEXT
   重なることはあり得ません

これが動機です

(その瞬間は、私達アクターが
アマチュアからプロへ
脱皮する瞬間でもあります)

その動機をアクターに限らず、
ディレクター、ライターも含めて、
アメリカで、多くの演劇人が
いっぺんに持った時代がありました

リー・ストラスバーグ、
ハロルド・クルーマン
シェリル・クロフォードを中心に集まった
GROUP THEATERの結成です


結成目標は1900年ごろから
旧制ロシアのMATで生まれ実験されてきた
*MAT:モスクワ・アート・シアター
スタニフラフスキーシステムを取り入れて、
演劇や映画をつくったらどうなるだろう?

アクター視点に噛み砕いていうと、
昨日は上手く行った、今日は駄目、
自分が上手く行ったと思う日は駄目なこと多し
 観客ののりが悪いと上手くいかない
っていう様々な悪夢から
スタニスラフシステムを試せば、
開放されるんだろうか?
っていう試み


こうして集まった若者たちは
様々な想いを葛藤させあいながら
「自然な人間に見えるアクティングとは
 どうやって生み出されているのか?」
を体現しながらわいわい模索しはじめます

 その中で体系化されて行ったものが
今、METHOD ACTINGと呼ばれるもので

RELAXATION
SENSE MEMORY 
EMOTIONAL RECALL
の三方法の習得をすることで、
REALITY  OF BEINGの質を
保とうとする方向での
アクティング方法です

二番目の方法までは、
誰もが乗っていたんだけど、

 GROUP THEATERでは
 EMOTIONAL RECALLが
自然に見える演技にとって
正しいアプローチか
不自然なアプローチかを巡って、
大論争が巻き起こり、

ステラ・アドラーがパリで
スタニフラフスキー本人から
EMOTIONAL RECALLなど
私はそんなこと言ってない
と言質をとったのをきっかけに、

ハロルド・クルーマン
ステラ・アドラー
サンフォード・マイズナーの
GROUP THEATER脱退につながります

何が不自然だというのか?

EMOTIONAL RECALL訓練とは

貴方は椅子に座り
一メートルほど目の先に
例えば、あなたのお婆さんの
お葬式の場面を
感覚の記憶を組み合わせて、
丁寧に思い描きます
思い描けたら、叫ぶ
思い描けたら、叫ぶ
を繰り返すうちに、
寸分たがわず直ぐに
思い描けるようになったら、
叫ぶ代わりに
思い描いた瞬間に涙を流す
っていう事を繰り返し
それが、パブロフの犬の様に
条件反射状態になったら、

与えられた演技で
涙を要求される箇所で、
お婆さんを思い描いて即涙を流せる
(泣こうとしなくても涙が流れる
 って状態になれる)
っていうテクニックとして使える

(このテクニックを増やして行くのを、
 引き出しをつくると呼んでいます)

ってものです

感情の流れが満たされてるので、
お客さんも感情移入がしやすく、
お客さんには不自然に見えないでしょう?
感情の流れがとぎれている方が
不自然に見えてお客さんは冷めるでしょ
その時、お客さんは物語に共感出来ない
だから、どんなことをしても、
感情の流れをとぎれさせないのが、
アクターのすべき仕事です
っていう感じね

これへの異論はね

そうやって予めつくられた感情は
目の前で起きている事実に対して
起きた感情ではないから嘘で
幾らお客さんが気づかないからって
そんな嘘を演じるのは
アクターとして出来ない
アクターが自分の演技を信じてないと
アクターが仮想状況を
信じることは出来ないので、
仮想状況がリアルだと、
お客さんに信じさせることは出来ない
よって、お客さんを物語から追い出す

ってことなの

まぁ、何となく伝わるんじゃない?

ここにね、

REALITY OF BEINGと、
REALITY OF DOINGは
袂を分かつの

 これが歴史ね

ここで異論をとなえた
ステラ・アドラーが、
EMOTIONAL RECALLの代わりに
アクティングテクとして提案したのが
BEST JUSTIFICATIONで、

日本語では、最適解

噛み砕くと、

状況を踏まえると
このアクションは
こう演じられるべきが最適
という風におさまっていくもので、

それをやり続けてれば
状況を逸脱せずに、
1アクションは
BEST JUSTIFYされて
おさまるべき場所におさまり
その時、副産物として、
感情もBEST JUSTIFYされている

故に自然な人間に見える演技になる
これこそ自然なアプローチである

って意味

この理論は、

感情はアクションの副産物
っていう点で、

人間の感情が起こる
その頃知られてた営みとマッチし、

彼女の最適理論が

DOINGタイプのアクティングの
長い間主流になって行きます

 ここから続く